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三日の猶予では

 三日の猶予では京都から職人を呼び寄せることは出来ない。江戸にそんな細工をするような職人が無いとすれば、金銀の穴は銅か真鍮の延べ板で埋めてしまうのほかはないと、まずあらましの相談を決めて、講中の世話役の人達は寺内に泊まるもあり、近所の宿へ帰るもあり、昼間の混雑に引きかえて、春の宵は静かに更《ふ》けて行きました。さあ、これからがお話で、夜が明けて見ると、その兜の前立てにならんでいる小判五枚と二朱銀五枚が紛失しているので、みんなも胆《きも》を潰しました。二朱銀は知れたものですが、一方は慶長小判ですから、その頃の相場でも五枚で五十両ぐらいになります。十両以上の品を盗めば首の飛ぶ時代に五十両の盗賊、さあ大変と騒ぎ立てるのも無理はありません。
 こう云うと、今の人はなぜ番人を付けて置かないのだ、さも無くば夜中は寺内に仕舞い込んで置けばいいと仰しゃるに相違ない。そこが昔と今とは人情の違うところで、いくら悪い奴でもお開帳の奉納物を盗むなぞという事はあるまいと油断している。
学習塾 竹ノ塚 ロジカルシンキングの学習塾ロジム | 自ら考え自ら学ぶ生徒の教室
投稿者 クレジットカード 02:14 | コメント(0)| トラックバック(0)
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