2012年10月16日
博士の地震計
「そんなばか気たことがあるものかね」
そういったのは、鉱物学の大家、真鍋博士だった。前には三吉と大辻とが控えている。「そうだ、ばかばかしいや。おい三吉、もう止めて帰ろうよ」と大辻老は腰が落付かぬ。
「いや先生」と三吉は一生懸命だ。「あの月島と日本橋室町とが、もし、地中路で続いていたとしたら、この疑がうまく解けるじゃないですか」
「そんな地中路はありゃせんよ」
「でも地底機関車を使えば作れますよ」
「地底機関車を見たものは一人もないじゃないか。そんなあぶなげな想像は、学者には禁物だ」
「じゃ、僕は地底機関車をきっと発見してきますよ」
「ばかなことを」
「とにかく先生。先生の考案された携帯用地震計を貸して下さい。それで地底機関車を探し当てて来ますから」
「それほどにいうのなら、あいているのを一台貸してあげよう」
とうとう博士は折れて、三吉のために携帯用地震計を貸し与えた。それは机の引出ほどの大きさの器具だった。
博士が室を出てゆくと、二人も立上った。
「三吉、そんなもの何にするのだよオ」
「これで僕が手柄を立てて見せるよ」
「手柄といえば」と大辻は急に思い出したように、岩の足型を出して、博士の残していった靴跡に合わせた。
「まだ岩は博士に化けていないや」大辻は仰山に失望の色をあらわしていった。
塾 京都 学習塾 毛を吹いて傷を求める
そういったのは、鉱物学の大家、真鍋博士だった。前には三吉と大辻とが控えている。「そうだ、ばかばかしいや。おい三吉、もう止めて帰ろうよ」と大辻老は腰が落付かぬ。
「いや先生」と三吉は一生懸命だ。「あの月島と日本橋室町とが、もし、地中路で続いていたとしたら、この疑がうまく解けるじゃないですか」
「そんな地中路はありゃせんよ」
「でも地底機関車を使えば作れますよ」
「地底機関車を見たものは一人もないじゃないか。そんなあぶなげな想像は、学者には禁物だ」
「じゃ、僕は地底機関車をきっと発見してきますよ」
「ばかなことを」
「とにかく先生。先生の考案された携帯用地震計を貸して下さい。それで地底機関車を探し当てて来ますから」
「それほどにいうのなら、あいているのを一台貸してあげよう」
とうとう博士は折れて、三吉のために携帯用地震計を貸し与えた。それは机の引出ほどの大きさの器具だった。
博士が室を出てゆくと、二人も立上った。
「三吉、そんなもの何にするのだよオ」
「これで僕が手柄を立てて見せるよ」
「手柄といえば」と大辻は急に思い出したように、岩の足型を出して、博士の残していった靴跡に合わせた。
「まだ岩は博士に化けていないや」大辻は仰山に失望の色をあらわしていった。
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投稿者 クレジットカード 11:13 | コメント(0)| トラックバック(0)
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