2012年11月05日
その部屋は十坪ほどの
その部屋は十坪ほどのがらんとした客間だった。真ん中に赤い絨毯が敷いてあってね、その上に水色の卓子と椅子とのワン・セットが載っているのだ。卓子の上にはスペイン風のグリーンの花瓶が一つ、そして中にはきまって淡紅色のカーネーションが活けてあった。
この部屋はたいへん風変りな作りだった。それが乃公の気に入っていたわけだが、奥の方の壁に大きな鏡が嵌めこんであったのだ。それは髪床の鏡よりももっと大きく、天井から床にまで達する大姿見で、幅も二間ほどあり、その欄間には凝った重い織物で出来ている幅の狭いカーテンが左右に走っていた。カーテンの色は、生憎その鏡のある場所が小暗いためよくは判らなかったが、深い紫のように見えた。もちろんその鏡の上には、こっちの部屋の調度などがそのまま反対に映っていた。乃公は部屋に入ると、第一番につかつかとその鏡の前まで進み、自分の顔をみるのが楽しみだった。鏡の位置が奥まって横向きになっていたため、鏡の前へ立たないと自分の顔は見えなかった。――乃公はそこでいつも勇ましい自分の顔を惚れ惚れと見つめるのだった。ヴィクトル・エマヌエル第一世はこんな顔をしていたように思うなどと、私は反身になった。鏡の中の乃公の姿も、得意そうに、反身になったことである。
タトゥー除去 仙台 一期一会。人とのつながりを大切に。 | 新着記事
この部屋はたいへん風変りな作りだった。それが乃公の気に入っていたわけだが、奥の方の壁に大きな鏡が嵌めこんであったのだ。それは髪床の鏡よりももっと大きく、天井から床にまで達する大姿見で、幅も二間ほどあり、その欄間には凝った重い織物で出来ている幅の狭いカーテンが左右に走っていた。カーテンの色は、生憎その鏡のある場所が小暗いためよくは判らなかったが、深い紫のように見えた。もちろんその鏡の上には、こっちの部屋の調度などがそのまま反対に映っていた。乃公は部屋に入ると、第一番につかつかとその鏡の前まで進み、自分の顔をみるのが楽しみだった。鏡の位置が奥まって横向きになっていたため、鏡の前へ立たないと自分の顔は見えなかった。――乃公はそこでいつも勇ましい自分の顔を惚れ惚れと見つめるのだった。ヴィクトル・エマヌエル第一世はこんな顔をしていたように思うなどと、私は反身になった。鏡の中の乃公の姿も、得意そうに、反身になったことである。
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投稿者 クレジットカード 00:05 | コメント(0)| トラックバック(0)
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