2012年08月24日
それは誰です
「それは誰です。僕だけに鳥渡教えて下さい、お願いします」
と僕は哀願した。「それはお断りする」と四宮理学士は冷然と僕の願をしりぞけた。こうなっては僕のとる道は一つより外ない。身を飜して自分の室に帰ると、大急ぎで電話機をとりあげると、研究事務室を呼び出した。あの室では言えないからミチ子をこっちへ呼びよせ、逃亡をすすめる心算だった。だがどうしたものだか十秒たっても二十秒過ぎても、誰も出てこない。僕は仕方なく、室を飛び出すと、ミチ子の所在を知るために、事務室へ出かけた。把手を廻し扉を内側へ押しあけたが、室にはミチ子も佐和山女史も居なかった。それでは図書室であろうと思って、間の扉を図書室へ開いたその途端であった。奇妙とも妖艶ともつかない婦人の金切声が頭の上の方から聞えたかと思うと、ドタドタという物凄い音響がして、佐和山女史の大きな身体が逆になって転り落ちて来ると、ズシンという大きな音と共にリノリュームの前に叩きつけられた。僕は茫然と女史の、あられもない屍体の前に立ちつくした。
痩身 美しく生きていけるのだろうか
と僕は哀願した。「それはお断りする」と四宮理学士は冷然と僕の願をしりぞけた。こうなっては僕のとる道は一つより外ない。身を飜して自分の室に帰ると、大急ぎで電話機をとりあげると、研究事務室を呼び出した。あの室では言えないからミチ子をこっちへ呼びよせ、逃亡をすすめる心算だった。だがどうしたものだか十秒たっても二十秒過ぎても、誰も出てこない。僕は仕方なく、室を飛び出すと、ミチ子の所在を知るために、事務室へ出かけた。把手を廻し扉を内側へ押しあけたが、室にはミチ子も佐和山女史も居なかった。それでは図書室であろうと思って、間の扉を図書室へ開いたその途端であった。奇妙とも妖艶ともつかない婦人の金切声が頭の上の方から聞えたかと思うと、ドタドタという物凄い音響がして、佐和山女史の大きな身体が逆になって転り落ちて来ると、ズシンという大きな音と共にリノリュームの前に叩きつけられた。僕は茫然と女史の、あられもない屍体の前に立ちつくした。
痩身 美しく生きていけるのだろうか
投稿者 クレジットカード 22:51 | コメント(0)| トラックバック(0)
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